【歯医者さんに聞いてみた、ハミガキ知恵袋。Vol.4 矯正歯科egao 生野先生】「子どもの歯磨きについて」編

「歯医者さんに聞いてみた、ハミガキ知恵袋。」は、お客様からお話を聴いたりご相談を受けたりすることが多い「歯」に関するトピックについて、ハミガキライフの店長が歯医者さんと対談する企画です。有益な情報を、楽しく、皆様にもお届けしたいと思います。

「歯医者さんに聞いてみた、歯磨き知恵袋。」の第4回目の登場は、矯正歯科egaoの副院長である、生野さやか(いくのさやか)先生です!生野さやか先生は、矯正歯科egaoで小児予防歯科をご担当されており、クリニックでは治療にとどまらず、お子さんの日常的な歯磨き指導を行ったり、外部での小児歯科に関する講演活動も積極的に行っています。また、生野先生ご自身も子育て真っ最中であり、子どもの虫歯予防に悩めるママさん達の強力な味方でいらっしゃいます。

店長:本日は、よろしくお願いします。

生野先生(以下「生野」):よろしくお願いします!

子どもの歯磨き剤は何歳から使えばいいの?

店長:早速ですが、よく、お子さんのいるお客様から、「子どもに歯磨き剤って使ってもいいんですか?」とか、「何歳から使ったらいいんですか?」という質問を受けることが多いんです。諸説あったりすると思うのですが、生野先生は普段、どのようなお話をされていますか?

生野:基本的には、歯が生えたら使用して良いのですが、1歳未満には使えそうだったら、というスタンスで1歳半をすぎたら使用することを強くすすめています。なぜかというと、0歳児は味付けのない離乳食を食べている時期で、味に敏感な時期なんですよね。なので、0歳児には、歯磨き剤を「使いたかったら使ってもいい」と伝えてはいるんですけれど、歯磨き剤の味が強いと、歯磨き自体を嫌がる子もいます。なので、歯磨き剤の味で歯磨き自体を嫌がっているところを、無理に歯磨き剤を使う必要はないかなと。嫌がらず、むしろ好きな子もたまにいますので使えそうな子や、使いたい方は、「500ppmのものにしてください」と伝えています。

店長:なるほど。

生野:実際に、0~1歳児くらいだと、前歯くらいしか生え揃っていない頃ですが、ママが前歯だけ磨くのって結構大変なんですよね。うちの医院としては、お子さんについては、まず「泣かないで歯が磨けることを優先させる」という風に考えています。0~1歳児といった、大して虫歯にならない(なりづらい)時期に、お子さんの嫌いな味の濃い歯磨き剤で毎日磨くよりも、歯磨き自体が嫌いにならないよう、のちに毎日泣かず磨けるよう優先させている感じです。お子さんに泣かれると歯磨きをしたくない、今日は辞めちゃおうと思ってしまう親御さんは多いので(笑)そうなってほしくないという気持ちがあります。

店長:なるほど。お子さんのことを考えると、それがいいですよね。

生野:フッ素は虫歯予防に効果的ですが、フッ素入りの歯磨き剤を使うことは、虫歯予防の効果を100点満点で表すと、10点分の効果くらいしかないと言われています。食生活など他の要因がとても大きいので、歯磨き剤を嫌がるのであれば無理矢理使う必要はないと考えています。

生野:1歳半を過ぎて、乳臼歯が生えてくると、お口に虫歯菌が住み着きやすくなってきます。そこで、その時期にフッ素を使うことを勧めます。この時期は子どもの歯の奥歯が生えてくる時期ですね。

店長:ほう。

生野:1歳からだいたい離乳食が終わり、「感染の窓」といって、「1歳7か月~2歳7か月」の時期に、お口の細菌が変化する時期に当たります。この時期に、歯磨き剤を使い始めるとよいと思います。

店長:「感染の窓」。初めて聞きました。

生野:それから、3歳頃からは、歯にしっかりめにプラークがついてきます。この時期は、歯磨き剤よりも歯ブラシ選びが重要ですね。歯ブラシの質を考えて選んであげないと、中には、歯ブラシが合っていないと、なかなかプラークがとれない子もいるんです。

店長:そうなんですねえ。

生野:歯ブラシは、その子のプラークの質で選んであげるのがよいです。プラークがべっとりつきやすい子もいますので。3歳児ころからは、 歯磨き剤だけでなく歯ブラシ選びも考えてあげるといいですよ。

生野:ちなみに、当院にいらっしゃるお子さんについては、はじめはジェル(状の歯磨き剤)を使ってもらっていますが、プラークが取りきれない子やステインがつきやすい子は低研磨性の歯磨き剤や歯ブラシの種類を変えて、歯磨きをしてもらって、次回の来院までにプラークがつかなくなるかどうか、試してみます。一般的に小さい子どもはどちらかというと、ジェル状の歯磨き剤の方が好きですね。なので、幼児さんくらいまでのお子さんについては、まず水磨きをして、ジェル状の歯磨き剤を使って、それでもなおステイン・プラークがつくような状況なら、ペースト状の歯磨き剤を使う、というようなイメージです。

店長:なるほど。ジェル状の歯磨き剤はお子さんに使ってもいいんですね。

生野:6歳児になると、フッ素が950ppm入っている歯磨き剤も使ってよいという基準になっています。なので、歯磨き剤を使って磨いた後で、タフトブラシを使って、ジェルを塗り込んでもらうような感じで、歯磨き指導をしています。

店長:なるほど。6歳からタフトですか。万全ですね。

生野:小学生になっていくと、歯肉炎になっている子が多いです。

店長:えっ。そうなんですか?どうしてですか?

生野:小学校の検診に行くと、歯肉炎の児童がとても多いです。びっくりするのですが、普段歯医者さんに来ない子どもは、歯肉炎になっていることが多いんです。当院にいらっしゃる親御さんにそのことを話すと皆さんびっくりしますが。普段から歯を磨く習慣が無い、磨かなさすぎの子がいて、歯肉炎になったりしているんだと思います。

店長:そうなんですか…知らなかったです。

生野:なぜかというと、小学生くらいになると、お母さんが子どもの歯を磨いてあげることが無くなっていくんですよね。小学生は歯の生え変わりの時期なので、自分で歯磨きすることが難しい時期です。そのため、この時期にも仕上げみがきをしてほしい時期なのですが。

生野:また、定期的に歯医者さんに通っている子は歯肉炎になることは少ないのです。例えばグラグラした乳歯があり、横から大人の歯が生えてきていて歯磨きがしにくくなって、汚れがたまって歯肉炎になっていることがよくあるのですが、そういう場合は歯医者さんに定期的に通っていたら発見することができます。まずは仕上げみがきをしていてくれたらそういう歯も親御さんが見つけることができて歯医者さんに連れてきてくれると思います。

店長:なるほど。お母さんが磨いてあげなくなると、お子さん本人では、ちゃんと歯磨きしないから…。

生野:そうなんです。なので、お母さんたちには、「小学校5~6年生くらいまで仕上げみがきはしてほしい」とは伝えているんです。

生野:中学生くらいになると、歯周病菌が歯に定着してくる時期になるので、その点も知っておかれた方がいいかもしれません。

店長:いやあ、勉強になりました。

歯の磨き方のポイントは?

店長:お子さんの歯磨きの仕方のポイントって、あるんでしょうか?

生野:特に歯が生えてから1~2歳くらいまでだと、お母さんが声を出しながら、例えば歌を歌いながら歯磨きしてあげたりすると、子どもが嫌がらなくなるので、おすすめです。たまに、歯磨きの代わりにガーゼでプラークを落とす方法もあると言われているんですが、ガーゼだと、乳児はガーゼを吸い込んでしまうし、あまりきれいにならないので、最初から歯ブラシを使う方がいいと思います。

店長:なるほど~。

生野:あとは、当院では、1歳児くらいからフロスを使ってもらっています。

店長:えっ!1歳からですか?早くないですか??

生野:そんなことないですよ。当院の子どもは、フロスの方が好きな子が多いです。子どもの歯と歯がくっつきはじめたら、フロスで落とすのがおすすめです。特に、AAの間(乳歯の前歯2本を表す。)をお掃除してあげるといいですよ。フロスにジェルをつけて美味しいフロスにしてあげれば、子どもも嫌がらないことが多いです。

店長:そうなんですねえ。

店長:子どもに歯磨き剤を使う、というのは、目的は虫歯予防、つまりフッ素を取り入れるということになるのでしょうけれど、一応、基準がありますよね。

生野:フッ素については、現在の基準では、「0~5歳までは500ppm」、「6歳から14歳までは1000ppm」「中学3年生(15歳)くらいからは、成人と同様1500ppmまでよい」ということになっていますね。ちなみに、予防歯科で有名なスウェーデンでは、「感染の窓」(1歳7か月~2歳7か月)の時期から1000ppmのフッ素を使ってもよいらしいですけれど。

店長:なるほど。

生野:歯の磨き方という点でお話すると、「①親が子どもの口の中を見ながら、ちゃんと磨いている部位を直視しながらしっかり磨いてもらう」、それから、「②歯を磨く順番を決めた方がいい」、ということがあります。

店長:なるほど。

生野:理由は、子どもの歯の磨き残しを防ぐためです。歯磨きの順番ですが、例えば左下の歯からぐるっとスタートさせて磨き忘れた歯が無いようにしたりとか、母親が子どもに声掛けしながら歯磨きしやすい状態でスタートしたりとか、色々あると思います。

生野:それから、子どもはベロが動くんですよね。なので、お母さんからしたら、磨きたい歯を磨かせてもらえなかったりということがあると思います。舌や唇で歯磨きの邪魔をされてしまう場合は臨機応変に歯ブラシを移動して順番通りじゃなくても、歯磨きしやすい場所に移動して磨いて元の場所が磨けそうになったら元の場所に戻るなどアドバイスしています。

店長:そうですよねえ。

生野:できるだけ、お子さんの口の中を広げて、直視しながら磨いてあげて、あとは「③前歯の表側は、やや歯ブラシを縦気味で歯ブラシの頭の部分を歯茎側に向けて動かす」と、よく見えるし、磨き残しも減ります。それから、「④奥歯は噛む面と横を丁寧に小刻みに動かしながら分けて磨く」ことですね。

店長:なるほど~。自分の歯じゃないだけに、色々気を付けることがあって、大変です(笑)。勉強になります。

子どもに「合った」歯ブラシ選びとは??

 店長:次にお聞きしたいのが、お客様から「うちの子どもには、どんな歯ブラシが合いますかねえ?」と相談を受けることが多いのですが、お子さん本人がご来店されている訳ではないですし、やはりお子さんの特徴というか体格や口の大きさにもよるので、何ともお話しづらいことが多くって…(笑)。そこで、どんな観点からお子さんの歯ブラシ選びをしたらよいのか、ポイントなどがあればお聞きしたいです。

生野:まず歯ブラシの選び方についてですが、歯ブラシは、毛の量が多いことが大前提ですね。当院で取り扱っているものであれば、テぺのか「セレクトミニ・エンジョイ」や「セレクトミニ・ソフト」をおすすめしています。

店長:歯ブラシの毛の柔らかさについては、選び方のポイントはありますか?

生野:プラークの付き具合にもよりますが、小さい子どもであればまずは柔らかめで良いともいます。乳歯が生えてくる時期に毛の硬い歯ブラシを使ってしまうと、歯磨きの時に痛がったり出血があったりするんです。なので、そういう時期はエクストラソフトが良いと思います。

生野:子どもでも、プラークの状況によっては、テぺのセレクトミニのエクストラソフトでは、プラークが取り切れていないこともあります。中には、オレンジプラーク(歯ブラシで落としきれないプラークが歯に定着したもの。)がついている子もいるんですよ。そういう子は、毛の硬さはエクストラソフトではなく、ソフトを勧めています。

店長:お子さんの年齢と、プラークの硬さというか、状況で診ないといけないんですね。

生野:そうですね。お子さん一人一人に合わせて、診ないといけません。

虫歯菌って、親から子どもに伝染するの??

店長:それから、これもよく質問を受けますが、虫歯菌って、親から子にうつるものなんでしょうか?

生野:虫歯菌がうつるということは、実際あります。ただ、情報が出回り過ぎて、あまりにも神経質になっている方が多いような気がします。

店長:ほう。

生野:つまり、「虫歯菌が子どもに感染しても、発症を防ぐ」という考えをしないといけないと思うんです。例えば、ママから子どもに食べ物を与えるときに「スプーンの口移しはダメ」と聞いて、口移しをしないように頑張っている親御さんも多くいらっしゃいます。親御さんとお子さんが、共にストレスなくスプーンの共有をしないで生活が出来るのであれば、「その調子で頑張っていきましょう」とお伝えしています。ですが、こうしたルールに過敏になって「一回(子どもとスプーンを)共有してしまった…」などと、親御さんが不安やストレスを抱えるくらいならば、そこまで徹底しなくでも大丈夫と伝えています。本来子どもは、親が「(食べ物が)熱くないかな?変なものじゃないかな?」とふ~ふ~と冷ましたり、親が味見したものを与えられて大きくなっていくものですから、子どもは親のお箸やスプーンで食べたがるものです。私も子どもを持って初めて知ったのですが、子どもが親の口に手を突っ込んでくることがあります。これを親が振り払ってしまうことは、子ども心に「ママに拒否された!」とショックを受けてしまうと思うのです。虫歯予防は、スプーンの共有をしないことよりも、普段の食生活や歯磨きの方が大事だよ~と言いたいというか…(笑)

店長:なるほど。

生野:まずは、ママが自分のお口のクリーニングをきちんとして、その上で、子どものクリーニングもしっかりするというのが大事です。そうするとママのお口の虫歯菌も減って、もし子どもがママのスプーンを使ってしまっても、虫歯がうつる心配は減りますよね。今は、妊婦さんの時から自分のお口をきれいにして、生まれてくる赤ちゃんの虫歯予防をする、という考えも広まってきていますね。妊婦さんの時からキシリトールガムを食べることも有効と言われています。

店長:そうなんですか。

生野:まずは、親が口腔内をきれいにする、そして食生活を整えることが大事です。結局は、虫歯菌に感染したとしても、日常の食生活が大事です。よく、「歯周病菌」の感染も、家族からが多いと言われているようですが、結局は、親子ともども、口腔環境をきれいにするのが大事だと考えています。

生野:それから、人は1回虫歯になると、どうしても再治療が多くなります。そういう意味では、最初の虫歯にさせないように、子どもが小さい時の口腔環境をきれにしておくことが大事だと思います。

生野:少し脱線しますが、これは私がいつも講演などでお話するのですが、歯医者さんに定期健診に来ることは、とてもいいことなのですが、じゃあ「4か月に1回定期健診に来ているから虫歯にならない、大丈夫」という話ではないんです。年に3回定期検診に来ていても一年365日の内、362日は、自宅で歯磨きをするわけなので、やはりこの362日間、きちんと歯磨きが出来て正しい食生活ができているかどうかにかかっています。子どもを虫歯にしたくないと思ったら、「検診に行けば大丈夫」ではなく、362日、しっかり正しい食生活と歯磨きとをすることです。

店長:なるほど!非常に納得しました。日常の口腔ケアや食生活が肝心ですね。

 子どもの歯並びを良くするために気を付けることって?

店長:ちなみにですが、矯正とも関わるかもしれませんが、お子さんの歯並びが良くなるように、小さいうちから気を付けるべきことって、あるのでしょうか?

(ここで生野院長のご登場。)

生野(院長):勿論、歯並びは遺伝的なものもあるし骨格の問題なので、ある程度体が大きくなっていれば、矯正装置で歯並びを良くするという方法をとります。そうした矯正装置をまだ使うことが出来ない小さい子の場合は、ベロの位置と鼻呼吸をすることで、歯並びが改善されるということで、呼吸を整える装置があります。

店長:(写真を見て)へえ~。こういうものがあるんですね。

生野(院長):人間の骨格の変化を長期的に見ていくと、だんだん顎が小さくなっては来ているんですが、逆に歯の横幅が大きくなってきているようなのです。

店長:ほう。

生野(院長):歯並びは遺伝で、骨格は親に似ます。ただ、歯の大きさは、兄弟でも違ったりするんです。結局、歯並びのでこぼこ具合は、「歯の大きさ」と「顎の大きさ」のバランスで決まります。

店長:なるほど~。

生野:あとは、食べ方ですかね。食べ物によって歯並びも変わると言われています。見えない矯正、とでも言いましょうか。良く噛むもの、イカ・タコ・こんにゃく、など弾力性のあるものは歯並びに良い影響があると言われています。あとは、生活習慣でいえば、うつぶせで寝ないとか、頬杖つかないとかもありますね。

店長:いや~非常に勉強になりました。最後に、歯科医院のアピールをお願いします。

生野: 当院に来たお母さんには、歯医者に1回来て終わりじゃなく、ママさんたちが子どもの歯を維持するために、そのための技術や知識を、ママさん自身にしっかり身につけてもらうことが大事だと伝えています。だから、「うちの医院はすごく話をする時間が多いです。」とあらかじめ伝えています。そういった方針に納得されている方は、しっかりやってくださっていますし、お子さんの口腔環境も改善していますね。

店長: まさに、先ほどおっしゃっていた、「362日の食生活と歯磨きが大事」ということですね。小児歯科のことは、色々なお子さんのお口を診ている方に聞かないと分からないことも多かったので、本当に勉強になりました。ありがとうございました。

生野:最後に、模型を使って子どもにフロスを使うときの注意点を…。

店長:(やり方を見ながら)わっ、結構深くまでフロスを入れますね。

【ご協力いただいた歯科医院】

矯正歯科egao
札幌市中央区北7条西15丁目28番地11 中央カクマンビル2階
副院長 生野 さやか 先生
https://egao-kyousei-sapporo.com/

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