【歯医者さんに聞いてみた、ハミガキ知恵袋。Vol.3 白石プライム歯科 阿部先生】「銀歯が取れてしまいました。どうしたら良いですか?」編

「歯医者さんに聞いてみた、ハミガキ知恵袋。」は、お客様からお話を聴いたりご相談を受けたりすることが多い「歯」に関するトピックについて、ハミガキライフの店長が歯医者さんと対談する企画です。有益な情報を、楽しく、皆様にもお届けしたいと思います。

「歯医者さんに聞いてみた、ハミガキ知恵袋。」の第3回目の登場は、白石プライム歯科の阿部一博(あべかずひろ)先生です!

店長:本日は、よろしくお願いします。

阿部先生(以下「阿部」):よろしくお願いします!

銀歯が取れる理由とは?

店長:早速ですが、私も経験があるのですが、普段の生活の中で急に銀歯がぽろっと取れてしまうことがありますよね。あれは、一体どういう理由で取れてしまうんでしょうか?

阿部:いくつかありますが、1つは「銀歯をつけている接着剤自体が経年劣化して、接着性を失ってしまう」ことです。接着剤自体も、5年くらいたってくると、ほぼ接着力ゼロになります。そして、接着力がなくなったとしても、銀歯がレゴブロックのように機械的にカチっとはまっているだけの状態で使い続けている方も多くいらっしゃるんです。ただ、何かしらのきっかけで、例えば糸ようじを通したときに、はまっていた銀歯が取れてしまうことはああります。このように、実は銀歯を入れて5年以上経っている人の大多数は、しっかり銀歯が接着しているのはなく、カチっとはまっているだけの可能性が高いです。

店長:そうなんですねえ。

阿部:それから、接着力がなくなると、銀歯と天然の歯の間に中に細菌が入ってきてしまうので、それによって虫歯が出来てしまうことがよくあります。そして、その虫歯によって、はまっていた銀歯と歯の間に隙間ができてしまって銀歯が外れやすくなることがあります。

阿部:あとは、銀歯って皆さんご自身の歯よりも硬い素材なので、例えば歯ぎしりとか食いしばりをよくする方であれば、ご自身の歯だけ減ってきて、銀歯だけ減らないという状況があり得ます。そうすると、相対的に銀歯の方だけが高くなって、その高い部分だけに噛み合わせの力が集中してしまうことによって、強い力が加わったりすると接着剤の劣化を加速させてしまい、銀歯が取れてしまうことがあります。

店長:へぇ~。

阿部:あとは、金属自体の特性でもあるのですが、「ガルバニー電流」といって、違う種類の金属同士が接触していると、いわゆる電池と同じ原理なんですが、異種金属間において液体(口の中でいえば唾液)を介することによって、電流が流れるんです。

店長:ガルバニー電流ですか。

阿部:例えば、銀歯が入っている歯があるとして、その上の歯に入っている銀歯とカチカチ噛んでいると、間に電流が流れて、銀歯に付けていた接着剤が破壊されていくということもあります。また、芯を取った歯の場合、代わりに金属の土台を入れる場合があります。そういう場合だと、噛み合わせの歯が銀歯でなくても、銀歯と土台部分の金属が、異種金属として接触していることになります。そうすると、土台と銀歯との間にある接着剤が破壊されてしまって、銀歯が外れやすくなるということもあります。

店長:すごいですねぇ…。

阿部:実は私が過去に銀歯に関してうちの歯科医院のブログにも書いたところ、結構なアクセス数を獲得しまして…(笑)。「厚別ウエスト歯科」のブログのアクセストップランキングのところにあると思いますので、ご覧ください。

店長:そちらも勉強させていただきます(笑)。

店長:私も含めて、普通の人はこの接着剤の劣化のことなど知らないでしょうし、銀歯は「はめたら終了」と思っている方も多いと思います。そうすると、銀歯のメンテナンスもした方がいい、ということなのでしょうか?

阿部:そうですね…大部分の方は、銀歯を外すと内部が虫歯になっていることが多いです。ただ、中には銀歯が歯にはまっているだけでも、銀歯の内側に虫歯が出来ることなく、キープ出来ている人もいらっしゃいます。そういう方は、おそらく日々のご自身でのホームケアがしっかりされているとか、定期的に歯科受診されることによって、口腔内の管理が出来ている方のどちらかなんだろうと思います。

店長:なるほど…。では、その「銀歯がはまっているだけ」の状態の人は、どういうホームケアをしたらよいのでしょうか?

阿部:それはなかなか難しい話ですね…。そもそも大人の虫歯の大多数が「歯と歯の間」に出来ることが多いと思うのですが、歯と歯の間のケアって、歯間ブラシとかフロスを使いますよね。

店長:はい。

阿部:結局、歯と歯の間のケアを、あまり力を入れてやり過ぎると、それがかえって銀歯を取れやすくしてしまうことがあります。例えば、皆さんがフロスを使う場合は歯の上からカチっとフロスを入れて、そのまま上に抜くという方が多いと思います。それだと脱離の力が働いてしまうので、銀歯が取れやすくなってしまいます。ですので、巻取り式のフロスであれば、上から入れたフロスを横から抜くことが可能なので、銀歯が入っている方はそういう使用法の方が望ましいと思います。

阿部:ただ、どうしても銀歯というのは劣化や接着力がなくなっていくことは避けられないものではありますので、ある程度時間が経ったら交換するというのも1つの方法であると思います。

店長:ちなみに、銀歯自体も劣化するのでしょうか。

阿部:金属自体がそこまで劣化するということはないのですが、食べ物の種類やかみ合わせの状態によっては、銀歯表面の性状がざらざらになってきたりとか、銀歯の表面が荒れてしまうことによって、歯に汚れが付着しやすくなったりとかはあります。あとは、そもそも銀歯自体が静電気を帯びやすい素材なので、汚れが付着してきてそれが歯石になり、歯科医院で歯石を取った時に銀歯の表面がぼこぼこしたり、ということもあるかもしれません。

店長:なるほど~。銀歯の付近に歯石がたまりやすい、っていう話がありましたけど、そういうものなんですか?

阿部:歯石というか、細菌が付着しやすいということですね。金属って、天然の歯やセラミックに比べて、静電気を帯びている特性があるので、口の中で菌を吸いつけてしまうんですよね。その結果、虫歯や歯周病を招きかねないということになります。

阿部:こうした銀歯の特徴もあるので、銀歯を定期的に交換する前提で考えると、交換の際に銀歯を外して型を取り直す時には、虫歯になっていることが多く、どうしても少し歯を削らざるを得ないんですよね。なので、銀歯は再治療を繰り返す中で、自分の歯は少なくなってしまうということが避けられないんです。

店長:なるほどですね。じゃあ、銀歯の付近こそ、きちんと磨いた方がいいんですかね。

阿部:そうですね。あとは、定期的に歯科医院に行っていても銀歯付近の歯が虫歯になってしまった、という人もいると思いますが、銀歯はレントゲン写真で撮っても白く映ってしまって、虫歯を発見しにくいという点があります。私たちも気を付けて見ているんですが、銀歯と歯の間に明らかに視認できるような隙間があれば早期発見しやすいです。しかし、銀歯と歯の内部で虫歯が進んでしまったら、視認することが難しい場合もあり、早期発見が難しくなることがあります。このように、どうしても、レントゲン上の銀歯の写り方の特性によって、虫歯の発見が遅れてしまうというのが、銀歯の弊害ですね。

店長:そうなんですねえ。

銀歯が取れたら、「すぐ歯医者さんに相談するべき」理由

店長:次にお聞きしたいのが、銀歯が取れた場合に歯科医院にすぐ行くというのが一番良いと思っていますが、なかなか行けなくて時間が経過してしまった場合にどんな弊害があるのか、そして、銀歯が取れた場合にどの程度の期間内で歯科医院に行かなければいけないのか…といったところが知りたいです。

阿部:銀歯が取れた状態を放置しておく弊害については、例えば「(銀歯が入っていた部分の)隣の歯が寄ってくる」とか、「元々銀歯がはまっていた部分の歯が伸びてくることによって、改めて銀歯を入れた時に接触しづらくなって、元の取れた銀歯自体を付けることが出来なくなる」といったことがありますね。あとは、元々銀歯がかぶっていた部分の歯というのは「象牙質」といって、歯の表面のエナメル質と比べると段違いに虫歯になりやすい組織ですから、銀歯が取れたままで放置されてしまうと、それだけで虫歯が進んでしまう可能性があります。ですので、虫歯も特になく銀歯自体の劣化も少なくて、口の中に取れた銀歯をそのまま戻せる状態だと仮定するならば、出来る限り早く歯医者に行くのが望ましいと思います。目安としては、早いに越したことはないですが、1週間以内であれば影響は少ないのではないかと思います。少し調整をして、取れた銀歯を再度付けたりすることも可能じゃないかと思います。

店長:ちなみに、取れた銀歯の保管方法で、何か気を付けた方がよいことってありますか?

阿部:取れた銀歯は、保管しておいていただいた方がいいとは思いますが、管理方法については特に気を付けもらうところはないです。ただ、ティッシュにくるんで持ってこられる方が多いですが、ご家族でゴミと間違えて勝手に捨てられたりする方がいますので、要注意です(笑)透明なジップロックに入れておいたりすると良いかもしれません。

阿部:あとは、銀歯が取れた部分の歯は、多少染みるかもしれないけれど、虫歯予防のために歯ブラシはきちんと充てて磨いた方がいいと思います。

店長:私も銀歯が取れてから2か月くらい放置していましたけど(笑)、よく虫歯にならなかったなぁ、と思います…。

阿部:皆さん、歯が染みたりすると、歯磨きの時にその部分を避けたりしがちになりますので、なるべく早めに歯医者に来てください。

店長:そもそも銀歯が取れた部分の歯が染みるのは、虫歯だからなのか、それとも象牙質だからなんでしょうか?

阿部:両方あると思います。黙っていても歯が病んでくるくらいなら、虫歯がかなり進んでいると思われます。痛みが強ければ、なるべく早く受診することをオススメします。

店長:なるほど。それから、「(銀歯が取れた部分の)周囲の歯が寄ってくる」というのは、どれくらいのペースで寄ってくるんでしょうか?

阿部:人によって違うんですが、比較的若い子の方が早いような気がしていまます。個人差がありまして、噛み合わせとか年齢とか、残っている歯の状態とかにも左右されます。

店長:なるほど~。

銀歯以外の詰め物には、白いものもある!

店長:銀歯以外の「詰め物」って、どのようなものがあるのでしょうか?

阿部:材料や接着技術が発達していない時代の技術だと、銀歯じゃないと出来なかった治療というものがあるんですが、今だったら、保険適用で白い詰め物で詰められることもあります。条件はいろいろありますが。保険の範囲内で、即日の治療で白く詰め直す場合もあります。それがCR(コンポジットレジン)です。

店長:へぇ~。

阿部:コンポジットレジンは、ある程度歯が残っていないと出来ないです。比較的ご自身の歯が多く残っている方であれば、保険の範囲内で詰め物をすることも可能です。

店長:そうなんですね。

阿部:詰め物の中でも、保険外で行う「ダイレクトボンディング」というのがあります。保険適用のものと比べると、強度が上だったり、詰め物自体のセラミックの配合量が多くなっているので、「摩耗しにくい」「汚れが付着しにくい」「変色しにくい」という特徴があって、比較的、長期的に使えるというものになります。

阿部:保険適用の詰め物は、色が変わったり、詰め物が減ってきたりとか、汚れを引き寄せやすかったりします。レジンというのはプラスチック系の素材なので、その成分の中に周りの汚れを取りこんでしまう性質があるので、表面に
菌が付着しやすい状態になります。ダイレクトボンディングになると、こうした点は少し緩和されますね。

店長:汚れを取りこんでしまうというのは、先ほどの銀歯に発生する「ガルバニー電流」のお話と同じような感じですか?

阿部:レジンはどっちかというと、「吸水性」があるというのが特徴です。それによって、劣化や細菌付着を招いてしまいます。例えば、色が変わるとか、割れるとか、虫歯になる等のトラブルを招くことはありますが、銀歯ほどではないですね。つまり銀歯より「虫歯になりにくい」ということにはなります。

店長:そうなんですね~。

阿部:それ以外の素材だと、一般的なものは「セラミック」ですね。セラミックは、見た目が良いという点だけ先行しているような印象があります。「見た目が気になるからセラミック」と考えている方が多いイメージですが、歯科医からしてみると、それよりは「汚れが付着しにくい」という点が最大のメリットだと考えています。変色がないという点もありますし、汚れが表面に付着しにくいという特徴があって、これが一番の良さですね。あと、セラミックは、歯と接着する仕組みが銀歯の場合と違っています。先ほど、銀歯だと接着剤の接着力が劣化するという話をしたと思いますが、銀歯は化学的な結合に頼っているのは一部で、ほとんどが機械的な結合(カチッとはまっているだけ)に過ぎないんです。他方でセラミックの場合は、化学的な結合がほとんどなので、歯に対する接着の安定性が違います。すなわち、銀歯と比べると接着剤の劣化がしにくい、ということになります。

店長:へぇ~。一体、何が違うんですか?銀歯もセラミックも、「はめる」という行為は同じように見えますけれども…。

阿部:元々、セラミックという素材が生まれたときに、セラミック自体があまり硬い素材ではないので、ほとんどを歯と一体化させないとその物自体が割れてしまうということで、セラミックを完全に歯と一体化させて、素材自体が割れないで済むような接着方法をとってきたという歴史があるんです。

店長:そうなんですね。

阿部:セラミックの場合は、接着剤自体も銀歯のものと違います。セラミック用の接着剤は、劣化が少ないです。その結果、セラミックの詰め物の中で虫歯になったりすることも、少なくなります。

店長:セラミック自体は劣化しないんですか?

阿部:セラミック自体は劣化しませんが、セラミック用の接着剤も劣化はします。ただ、劣化して詰め物が取れたときに、セラミックの場合は周りに汚れが付着しづらかったり、接着自体が安定しているという性質があるので、細菌が入りづらく、内部が虫歯になっていることは少ないということになります。

阿部:なので、「(セラミックの歯が)取れました」、といって来院してきた人がいても、そのまま取れた歯をつけられる人が多いですね。私も、セラミックの歯が取れた患者さんを診た中で、内部が虫歯になっていた人はほとんど見たことはないですね。

店長:そうなんですねぇ。

阿部:セラミックも、強度的なところが問題視されていたことがあって、歯ぎしりや食いしばりをする方には向かないと言われてきたんです。ただ最近は、セラミック自体の性質が向上していて、例えば、被せ物に使うセラミック(「ジルコニア」)素材だと、格闘技をやるようなレベルの食いしばり等がない限りは、耐久性も十分と言われています。

店長:ジルコニアは結構硬い、って言いますよね。

阿部:歯ぎしりや食いしばりをされる方でもジルコニアであればまず問題はないでしょうね。素材自体の耐久性もそうですし、金属と比較しても虫歯や歯周病のリスクも大きく下げられるので、歯を長く残したいという方にはおすすめの素材です。

銀歯が取れた方は白石プライム歯科へ

店長:最後に、歯科医院のアピールをお願いします。

阿部:例えば、銀歯が取れたとか、虫歯になったという場合に、「そこだけを治療してほしい」という方も中にはいると思うんですけれど、「なぜ(銀歯が)外れたのか」とか、「なぜそこだけが銀歯なのか」とか、そういったところを考え、診査・診断に時間をかけてやっています。そしてその中から、何パターンかの治療の選択肢を患者さんに提示し、患者さんの希望とかも踏まえ、患者さんにとって最適なものを選択してもらう、ということに重きを置いてやっています。ですので、患者さんとのコミュニケーションを大切にしていて、実際に患者さんの口の中について問題がありそうだったら、事前にじっくりと時間をかけて検査をして、今後起こりそうなリスクや、治療した方が良い部分の提案をさせてもらっています。

店長:ちなみにですが、白石プライム歯科さんでは、患者さんが選びうる選択肢は多い方ですか?

阿部:治療方法については被せものも含めて多くのものが出回っていますが、本当に患者さんにとってメリットになるものを厳選して揃えています。その中から患者さんの状況に応じて、適切だと思えるところを何種類か提示して患者さんの希望に合わせて選んでもらっています。

【ご協力いただいた歯科医院】
白石プライム歯科医院
札幌市白石区東札幌2条6丁目6-14 渡会ビル1F
院長 阿部 一博 先生
https://www.shiroishi-prime-dental.com/

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